鳶と鶴

鳶(とび 鳶口)の使い方には、握り引き、抱え 引き、巻き腕などがある。
巻き腕とは、片手 を柄に巻いて引くことをいう。
この手法を使 うのは特別なカを必要とするときだけで、あ まり使われない。
またできる者も多くない。
 打つ順序に従って一番鳶、二番鳶、三番鳶 とよぶ。
一番鳶を打つ場合、頭圏(とうけん 材木の切り口) から六寸(紛18センチ)ほどなかに 打つのが鉄則。
でないと引っ張ったときに 自分の足元に頭圏を引きつけて危険だから である。
  また張り鳶、逆太(さかた)鳶などがあり、材木の 頭圏を上げるときに用いる。
二番、三番の鳶が 引っ張ると材木の先が小高いところに上る。

 鶴(鶴嘴)は、とくに太い材木を扱うとき に用い、鳶以上にいろんな使い方がある。
そ のなかで最もよく使われるのが差し鶴である。
図のように身体を一挙に鶴に委ねてひねると 材木が前進する。
その距離は平坦地で10〜 15センチ、相当に根気を要する作業である。
 他に引き鶴、受け鶴、拝み鶴などがある。

算盤修羅

修羅(すら)のなかでもとくに古い手法の一つに算盤(そろばん) 修羅がある。矢遠や架線の出現で姿を消し現在ではその 名を知る人さえ少ない。80歳を超えている私自身 、 昭和初期に二度、経験したくらいで、しかもそのころ すでに姿を消しつつあった。
 二度の経験と、そのとき先輩たちから聞いた話をもとに 算盤修羅を再現してみる。
 私が経験した算盤修羅は二度とも滝の上での出材に 従事していたときである。
身体ひとつで歩くことさえも 危険なうえ、傾斜も急であり、だれの目にもふつうの 修羅や木馬での搬送は不可能にみえた。
そこで最も適した手法として算盤修羅を用いた。
 まず最初に竿を引く。ふつう全部の竿引き が終わってから修羅がけに移るのだが、場所 が悪い関係で一腕(ひとうで)ごとに巧斜を 進めていく。 枕を50センチ間隔くらいに固定し、長さ 150センチ、直径3センチばかりの檜の枝や 雑木を編むようにして敷き、枕の下側で釘止 めする。
これの繰り返しで溝途ができると、 両脇に加定を固定する。さらに滑る材木の勢 いを緩めるため雑木で編んだところに杉葉を 差し込む。
 図のように、前後を材木修羅にして、終点 に臼(うす)を作り、算盤修羅ができ上がる。