修羅出し

搬出手法の一つ、修羅(すら)出しをとりあげる。 修羅出しとは材木を並べてその上を滑らせて伐木を 一か所(土場)に集める手法で、昭和34、5年ごろまで は伐出の主流であった。
修羅づくりは、周囲の状況を判断して土場または中継所 を選ぶことから始まる。そこを中心に腕を立て、腕から 腕へ竿(さお)をわたす。これを竿引きという。竿を引 きながら真束(まづか)と追い束によって固めていく。 途中、谷にかかったときは内竿を使って張り出し少しでもカーブをなくする。
 竿引きが終わると修羅掛けになる。まず臼(うす)、修羅を滑ってきた木材が突き当たりとまるところをいうが、 これを設定する。 適当な切り株を利用できればいちばんよい。

 臼が決まると巻き立て。細い材木を立てて針金で竿に縛り固定する。 修羅が前にずれないように止め補子(ほご)を巻き立てに縛る。 そして 手ごろな材木で前枕、中枕、後枕を竿に掛ける。次に末口10cm ほどの直材を末先に三本並べる。これを溝途(みと)という。 溝途から少し離れた個所に太い材、矢台をおく。さらに溝途と 矢台の間に矢造(やぞう)を差し込む。このとき矢台を振り合わ せて調節する。溝途の両脇に溝途より少し太い材木、溝途脇を入れ、 くさびを枕に打ち込むか、迫りを差し込んで矢台をとめる。

竿を真束、追い束で固め、枕、止め補子、溝途、矢台、矢造の席序で作っていく。溝途に 溝途脇を入れた後、打ち木という太い材木を二、三本、矢造にもたせて重ねておく。 これ を打ち木を打つという。 打ち木が止め補子に掛からないため、しっぽく(檜の枝を三角錐 に削ったもの)を打ち木の頭圏(とうけん先端)に打ち込み針金を巻きつけて矢造からひかえる。 打ち木がずれないためでもある。 山側の矢造をもたせるところがないため、両方の矢造が 交差したところを針金で縛りくさびで締める。
 このようにして第一の修羅ができ上がると、その後ろに次の修羅を掛けていく。順次、 この作業を繰り返す。カーブの辺りで改めて止め補子をつくる。

 竿を引き終わって修羅を掛けるにあたり、切り株を臼に決めた場合、修羅の鼻(先端) を 二、三枚、臼に向かってまっすぐにつくらなければならない。材木が溝途に沿って滑って いくため、溝途が外を向いていると、材木が臼に当たらず他の方向に飛び出していくからである。
 修羅の途中であれば撰みにあたり再び、溝途に戻るが、臼では材木を止めて下に落とし て整理しなければならない。
そこで修羅の片側には加定を作らない。臼にあたってとまった材木を落としやすいようにするためである。

 薮(やぶ)抜きなどの止めは簡単でよいが、太い材木にかぎっては図のような頑強な止 めを作る。まず竿を引き、竿の上に材木を何段も組み上げ、その上に材木を並べる。 この止めを選み止めという。 このようにして暴れる材木を一時に止める。
 山の中腹までは薮抜き、迫り出しによって集材し、ある程度あつまると修羅出しに なる。修羅で目的の位置まで材木を運ぶ。これを修羅取りという。


修羅に材木を引き込むことを入れ込みというが、この作業にあたるのはふつう2、3人。 中継所や土場で滑ってくる材木を落とす役を馬子(まご)、さらに馬子が落とした材木を 整理し積み上げる役を木直(きなお)しという。
連係よく流れる作業風景を繰り広げる彼らの間には独特の合言葉がある。材木を滑らす とき「ホーホウ」。支障のないときは「ホーホウ」の返事、待ての場合は「オーイ」。 これを承知すれば「オーイ」と答える。
 急勾配では材木の勢いが強く暴れることがある。
これを防ぐため、急勾配のところに 蓑(みの)という障害物をつくり修羅に釣り上げる。 細い材木は蓑の下をくぐり抜けるが太いのはこれに当たり勢いが弱まる。また 修羅のすきまに杉葉を差し込んで勢いを緩める手法もある。がこの手法では細材も とまってしまうため、薫のほうがより適している。
 さまざまな工夫を凝らしより安全、より確実ぜめざす先人たちの知恵を、修羅出しに みることができる。